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Column【コラム -琉球新報より 共に考える住宅デザイン-】

琉球新報より 共に考える住宅デザイン ― 金城 豊

vol.010 すまいと伝統
空間の間取り
自然素材でできた建築の構成。木、土、紙の柔らかい建築建築が人と馴れ染み深いものとなる。
「すまいをつくる」という面ですばらしい才能をもって教えて語りかけてくるものは、住宅をデザインする建築家ではなく、我々の祖先であり自然環境である。

もちろん生活のあり方も、家をつくる材料や工具も違っているのだが、現在においても、我々の住まいの手本にする事は、確実に最も有効な事であると考えている。

住まい手にとっては、生活から建物に関わる自然環境として、暑さや寒さ、風通し、雨の多さといった気候風土の問題を、たえず日常の生活のあり方として、建物と環境との関係を常に意識しなければならないのである。

例えば、沖縄の雨の多さを考えると庇がないとどれだけ不便で、夏どれだけ暑いことか、この仕事をやっていると身に沁みて分かってくるのである。

建築学として学ぶものでなく、結果的にこの庇ひとつ考えるにしても、身体の延長線上のうえで、祖先の作り上げてきたことや、環境のことを意識しながら住宅をデザインすることになるのである。住宅をつくるということは、自然と人との交感が重要なことだと考えている。
自然素材の力
視覚、触覚、臭覚といった、人間が本来的にもっている感覚、直感力を必要とするのである。祖先のもっていた単純なものから、ゆたかな効用性を生み出したすばらしい生活の知恵から学ぶべきものは多い。

一本の紐と一本の竹で組あげられた窓格子、太い竹を並べ合わされた縁側、単純な石を柔らかく掘り込んだ手洗鉢など、一つの自然素材で多くの目的に使用できる生活の小物たちをつくりだしている。これらの住まいに対するあり方は、いろいろな意味で、現代の生活に強く残っている。

物としては、タタミ、障子、フスマ、スダレなど、時に応じて取りはずすことのできる障子やフスマの可動的な建具、庇のある南側の縁側、檜の美しい木肌や障子、フスマの紙や壁の土、砂などの自然の素材から作り出される空間の雰囲気など、数えあげればきりがないほどである。
太い竹を組み合わせできた縁側。庭園へ張り出し自然を感じる。奥には、石を彫りぬいた水溜めがみえる。
さまざまな竹の大きさをくみあわせて生活道具をつくる。生活能力の高さが感じられる。
雨や雨音も楽しめる空間
こうした自然素材でつくられてきたものが、我々の生活の伝統であり、住まいの伝統だと考えている。より快適に暮らそうとする祖先たちの生活能力の蓄積から生まれてきたものである。地球が誕生して以来の歴史の中で、それぞれの木、土、石、といった素材が、それぞれの風土を受容して生まれる個性に強く引かれている。

自然の素材は、人間の欲望が到底太刀打ちできない空間的、時間的な複雑さを内包しているように感じているからだ。物と人との交感の過程の中から建築が人間と馴れ染み深いものとなるのだろう。

これからは、様々なものをつくっていくときのデザインとして、ただ表面的に取り入れるだけでなく、デザインする側の自然環境にたいする姿勢のあり方や考え方として、歴史的な経験の積み重ねを現代建築の空間の中に、その大事さを問いただしながら考えていきたいと思うのである。

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