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Column【コラム -琉球新報より 共に考える住宅デザイン-】

琉球新報より 共に考える住宅デザイン ― 金城 豊

vol.013 光を立体的に考える
自分の住宅の外廻りや室内のインテリアを、お洒落に飾られたリゾートホテルのように演出された空間をつくりたいといったニーズが高まっている。 家族の構成のあり方や生活時間のさまざまな取り方とともに、現代の住宅の明かりに関する考え方は、常に変化している。

以前のように、照明と言えば一室一灯という単純で雑な考え方によって部屋の真中に笠付きの蛍光灯をぶらさげ「明るければ明るいほど良い」という発想では、住まいとしての落ち着きのある空間を得るには問題があると考えている。
階段の足元から光を照らし出し浮遊感と影を楽しむ。

天井面の光に間接照明を埋め込み、光のグラデーションを作り出す。
多様化する光の空間
一方、スローフーズやスローライフという人間らしい生活のあり方が見直され、人生を上手に楽しみ、身の丈にあった生活感覚で少ないもので豊かに「自分らしく心地よく暮らす」という人も増えている。こういった時代の流れを背景に、住宅のデザインのあり方や明かりに対する考え方も従来以上の柔軟な発想が必要だと日頃から意識している。

これからは、現代的な住空間にフィットした空間の演出方法を考えていきたいのである。例えば、リラクゼーションをキーワードにした暮らし方の演出方法は、リゾートホテルなどでよく見かける照明のように、スポットライトや間接照明などの部分的な照明を利用して、空間自体に明暗のメリハリをつけることである。

暮らしの中でリラックス効果を役立てるには、明(光)と暗(陰)を意識的にコントロールすることである。特別な知識やテクニックが無くても空間を常に意識する事が重要であり、光の強弱や、照明器具の高さを高、中、低と3段階に変化をもたせ組合せることで、空間全体に陰影のある立体的な表情の雰囲気を持たせることが可能となる。

光の重心を低めに設定する「ホリゾントライト」という舞台照明の手法を利用することで、低い位置に光源がある空間は通常と全く異なった雰囲気となるだけでなく、メンタル面へのリラックス効果が高いと言われ落ち着き感のある豊かな暮らしを演出することができるのである。
様々な点光源によって空間全体に立体的な奥行きをつくる。
寝室やドレッサーまわりは、リラクゼーションの配慮をほどこす。
気軽に空間を演出する
心地いい光は、空間に潤いを与え照明本体の存在を忘れさせ光そのものを純粋に楽しむ事になるのである。光自身が存在を主張するのではなく、空間になじむことを第一に考えたとき、今までにない生活空間が生まれ、暮らす人の心と体を安らかに解放するデザインとなるのである。

全体の照明は、できるだけ柔らかく光を拡散させ室内を照らすことであり、部分の照明は必要な明るさに方向性をもたせ併用することが大切である。光に対する意識を少しだけ変えてみるだけで、部屋は鮮やかにその表情をかえてみせ生活を気軽に楽しむ事ができるだろう。

これからの住空間のありかたは、照明に対する機能性やデザイン性といった表面的な観点からだけで選ぶのではなく、明るさと同時に常に暗さがもたらすくつろぎのある雰囲気を忘れてはならないのである。光を量で測るのではなく、光を質的に、立体的に組み合わせることが大切だと実感している。

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