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Column【コラム -琉球新報より 共に考える住宅デザイン-】

琉球新報より 共に考える住宅デザイン ― 金城 司

vol.014 日常生活楽しむ工夫
空間の間取り
水の流れを意識させるバス水栓金物。
朝、目を覚ました後たいがいの人はトイレで用を済まし、次に顔を洗い、一杯の水を飲む。

この一連のミステリアスな行動を疑問に思ったり深く考え込んだりする人はあまりいないと思う。

お国柄が変わり時代が進歩しても、さらにはどんなに劇的技術革命が起きたとしても不思議と変わらない人間の生活パタ−ンである。

さらに、生活シ−ンを拡張して生活全体を眺めていくと、帰宅後にシャワ−やおふろに入る。眠る前に歯磨きをするなど、いくつかの決まりきったパタ−ンが日常生活の中には紛れ込んでいる。

日々繰り返す日常の生活行動。しかし一日の長い時間の中でとらえてみると、誰もが体験するささいな生活事件簿にすぎないのかもしれない。だからといって、この行動を軽くみてはいけない。

洗顔にしろ、入浴にしろ、歯磨きにしろ、どれをとっても最も人が無防備でリラックスし、自分らしさを無意識に演出しているかけがえのない時間だからである。それに加えて生活リズムを整え、さまざまな生活場面の切り替えを行う重要な儀式でもあるからだ。
金物達の演出効果に期待
ふだん見ることのない水栓金物の後ろ姿を鏡で演出してあげる。
鏡に掛けられているものはソ−プホルダ−とブラシ入れ。もう一つはコップとして活用。
建築の計画が一本一本の線の重なりで内部と外部に見切りをつけ、秩序ある環境を整えるように。内部空間でもパブリックな場とプライベ−トな場を仕切るように。

日常に潜むミステリアスな行動も生活リズムに秩序を与える「心理的な仕切り」のようなものであり、意外と建築的なものかもしれない。

カントリ−・クラシック・モダン・現代といったさまざまなスタイルの情報が紹介されるようになってきた今日。人それぞれ、独自のライフスタイルや住宅のスタイルも反映されるようになってきた。

しかしながら、このような日常生活における儀式的場を深く積極的にとらえ、細部にまで関心を示す人は少ないと思う。

日常生活を何げなく支えていた水栓金物。あまりにも日常過ぎて「普通なもの」になりがちな金物達。
しかし、毎日使い、毎日触れる物だけに、単なる設備機器としてとらえるのでは少し寂しい気がする。

この金物達も「心理的な仕切り」を日々演出する空間の一部と解釈することで、より充実した人それぞれのライフスタイルが反映されるのではないだろうか。
「空間の質感」に変化を
建築の持つ空間の解釈をさまざまな視点から見つめ直す作業の重要性を金物から学んだ。「空間のメッセ−ジ」は同じでも「空間の質感」に変化を与え、何げないありきたりの日常生活のアクセントとなる金物達の演出効果にこれからも期待したい。

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